売上向上には今いる顧客を大切にしよう

2020年5月3日

 毎月新しい顧客に商品を買ってもらうには、とてつもない労力がかかります。せっかく商品を買ってくれたお客様に再度来店していただくことができれば、リピーターとしての売上を見込むことができます。今いるお客様を大切にすることを第一に関係を築いていくことを「顧客深耕」といいます。

 顧客は7つの層に分類することができます。「未知の見込み客」は「潜在客」とも呼ばれますが、まだ自社や自社の商品について知らない顧客層です。「既知の見込み客」はニーズ、ウォンツとも高まった商品購入をしたい顧客層です。ここまでは、”もうかる「しくみ」”として詳しく説明しています。

 「一見客」は初めて商品を購入した顧客層です。この時点では商品の魅力は伝わったとしても、自社に対しての愛着など顧客ロイヤルティは育っていません。再訪してもらえれば「浮遊客」となりますが、この段階でも他社へ乗り換えられる危険性がとても高い顧客層です。自社を気に入ってもらえれば、何度も購入していただく「上得意客」、「ファン客」へと育っていき、安定した収益を上げることができ経営的にはとても重要なことです。しかし、購買間隔があいたり、他社へ乗り換えたりした「休眠客」はどうしても発生してしまいます。

 それでは、それぞれの顧客層ごとにどのように対応すればよいか説明していきます。

見込み客に購入を勧めるためにはどうすべきか

 ”もうかる「仕組み」”で、ニーズ、ウォンツを十分刺激した後であれば、魅力的なオファーを提示することが意味を持ちます。十分な商品に対する情報を得て自分の判断に自信を持って顧客に商品を選んでもらえば成功です。例えば、「今だけ」、「限定〇〇個」など、顧客の損を回避したい心理をうまく利用することが魅力的オファーにあたります。

 では、まだ情報が不足している状態であったり、商品に対する不安などがぬぐえない場合はどうすればいいでしょうか。その場合には、顧客の心理状態やニーズに応じた「接客」がとても大切になります。品質の悪い商品を売りつけられるのではないかという顧客の不安をぬぐい、良質で安心できる商品を提供していることを信頼してもらうのは、接客の良し悪しで決まります。商品のメリットをしっかり説明し、決して売りつけずお客様のニーズにしっかり適応した商品を提供することが重要になります。

一見客をつなぎ留めるにはどうするべきか

 たとえ一度、購入いただいたからといって、その後継続して商品を購入を続けてもらわなければ、すぐに休眠客となってしまいます。新規顧客の顧客獲得コストは既存顧客の5倍になります。既存顧客に再購入してもらう方が何倍も利益を生むことになるわけです。では、一見客をどうしたらつなぎ留めることができるのでしょうか。まずはアフターフォローをしっかり行うことです。

 顧客情報が入手できることが前提となりますが、まず、お礼状を出すのはとてもよい方法です。そのためには、初回購入時に顧客情報を入手する手段を考える必要があります。一番良いのは顧客カードやポイントカードを記名式にして個人情報を記入してもらうのが良い方法です。アフターフォローのためとか記入してもらいやすい理由やインセンティブを用意することも考えてみてもよいでしょう。

浮遊客のロイヤリティを向上させよう

 複数回、購入していただいた顧客は浮遊客となります。まだ商品やブランドに顧客ロイヤリティ(忠誠心)を持っているわけではありませんので、このままでは競合に流れてしまいかねません。それを防ぐためには、顧客ロイヤルティを向上させるための、対策を考えなくてはなりません。具体的には、商品やブランドのノベルティなどを配布することや、顧客ニーズに合ったイベント開催なども効果的です。繰り返し商品の良さに触れてもらうことで再購入につなぎ、上得意客へと育てて行きます。

顧客ロイヤルティとは実際には何なのか

 顧客ロイヤルティを上げるといっても、顧客ロイヤリティそのものが今ひとつ、つかみどころがないのも事実です。顧客がもつブランドや商品、サービスへの「信頼」や「愛着」がロイヤリティなのですが、それを量る指標があるわけではないので、具体的ではなくわかりにくいものにしています。顧客ロイヤルティを高めるためには試行錯誤を通じていつも考える必要があります。

 商品・サービスに対する満足度 × 競合との比較優位性 × ブランド、商品・サービスに思いを寄せる時間

 まず商品・サービスそのものに満足をいただけなければ、顧客ロイヤリティを高めるどころかマイナスになってしまいます。また競合の商品・サービスよりも評価いただけなければ、顧客は競合に流れていってしまいます。商品・サービスに親しんでもらえる時間が長くなれば愛着がわきますが、短くなれば休眠客になってしまいます。その意味ではいずれも重要なファクターになります。それぞれに注力することで顧客ロイヤリティの向上に結び付きます。

上得意客を増やすためにはどうすればよいか

 上得意客は何度も購入してもらった顧客ロイヤルティが十分高まった顧客です。上得意客を増やすためには、既存客向けのフェアを開催したり、誕生日イベントなどの案内を出したり、より多くのアプローチを行い再購入をくり返してもらうことを続けるしかありません。しかし顧客のニーズに寄り添って継続して商品、サービスを提供し続けることは大変難しいことです。そのためには接客などを通じて顧客のニーズや好みを多く取集することも必要となります。

ファン客が更なる顧客を呼び込む

 顧客ロイヤルティが十分高まったファン客になれば、商品・ブランドをSNS上や口コミで宣伝してくれる存在になります。ファン客が更なる顧客を呼び込んでくれるサポーターとなってくれれば、これほどの宣伝はありません。ファン客に育てることが顧客深耕の最終的な目的となります

 一度ファン客になったからと言って安心はできません。顧客の心がわりを予測することはできません。継続して顧客ロイヤルティを向上させるための対策を取り続けましょう。

休眠客を再度、顧客に取り込もう

 休眠客は自社の商品・サービスから離れて購入をしなくなった顧客層です。競合に流れてしまった場合もあるでしょうし、単に飽きてしまったのかもしれません。その理由を調べて再度、再購入するように戻せれば、新規客を増やすよりはるかに低コストで顧客を増やすことができます。

 もしかすれば、商品・ブランドの想定顧客層の年代からずれてしまったのかもしれません。その場合は、より上位の年代向けのブランドへ誘導することも有効な解決策になります。

 自社の顧客の状態に合わせたアプローチを的確に行うことで、顧客深耕を実現しより濃密な顧客との関係を築くことが、自社の収益を安定化させる早道です。ぜひ顧客の数を増やす努力を進めましょう。